アーバン・ディベロップメント・ファンデーション見学記
約束のその日、私達は時間に遅れないように8時半に家を出て、日本から
来ていた日本人の女性を途中で拾いリジョイスのオフィスまで行きました。
今回のスタッフは西洋人のお医者さん1人、タイ人スタッフ2人、日本人女性
1人、そして私達夫婦です。目指す目的地は事務所から30km程の或る村です。30分程で最初の家に
着きました。若い女性が私達を出迎えてくれました。髪が随分抜けて薄く
なっていました。その方の御主人はもう既にエイズで亡くなったそうです。
1歳半になる娘さんがいるそうですが、幸いその子には感染しなかったと
の事です。
お医者さんは患者さんを診察し薬を渡していきます。その側でタイ人
スタッフが患者に渡した薬の種類をノートに書き留めていました。それから、その家を出て、今度は100m位戻ったところにある家に入り
ました。お医者さんが英語で話しかけていたので話を聞いてみると、
その男性は昔大学で英語を教えていたそうです。
まだまだ若い人だと思いますが痩せ細り肌も老人の肌のようです。胸の傷
に薬を塗った後、お医者さんは彼に最近友達が訪ねてくるかと尋ねました。
彼は静かに首を横に振りました。私たちは又、車に乗り次の目的地を目指しました。着くと5歳位の女の子
が椅子にちょこんと座っていました。その子は生後1ヶ月でおばさんに引き
取られたそうで、彼女の両親は既に亡くなったのでしょう。
彼女の手や足は黄色いかさぶたで覆われています。しかし、左手や頭の
かさぶたはお医者さんの薬できれいに治ったそうです。診察後、お医者
さんは茶色のサンダルを女の子にプレゼントしました。女の子は嬉しそ
うに早速履いていました。
それから、3、4軒程回って最後に訪れたのはお寺でした。お寺の横に大
きな集会所が建てられています。この集会所は、貧しい村人が少しでも
生活の糧が得られる様にと建てられたものです。中にはミシンが何台も
置かれ、村人が作った装飾品が並べられていました。
又、集会所の中には中学や高校程度のタイ語や他の科目の教科書類
やビデオ類も置かれており、この集会所が住民の啓発の場としても機能
している事が分かりました。
この集会所の隅をカーテンで仕切り、診察室として使っていました。
そうこうしているうちに患者さん達が集まってきました。皆若い人達で、
楽しそうにお喋りし、外見は健康な人と全く変わりません。今回、訪問した方々の中で或る女性が、「私はもうすぐ死ぬのではない
だろうか。」とお医者さんに尋ねました。お医者さんは即座に「死には
しないよ。考え過ぎだ。」と言って退けました。その女性はまだエイズの
症状もそんなにはでておらず元気そうでした。しかし遅かれ早かれ、
助からない運命にあります。その女性もお医者さんも十分それを承知
しながらこう言うしかないのです。もし自分が彼らだったらどんなに絶望している事だろうと思いました。
エイズは現時点では不治の病ですから。タイの熱い日差しの中、車に揺られ、肉体的にも精神的にもグッタリ
となりましたが、本当に価値のある一日となりました。